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エッセイ6「場所ということ」15

 翻ってみると、出張仕事が行政から発注され、大きな仕事を多くの業者が集まって施工するあり方は、極めて近代的であり、多くの場合、「工務店」が間に入る。

実は、高度経済成長期に、産業資本の力と、それを支える在来木造技術を持つ職人たちを束ねたのが「工務店」という業態で、職人と行政の間で、

「現場を管理監察する」という新たな仕組みに乗っ取り、住宅メーカーという世界的にも特殊な形を代表例として、戦後わずか数十年の間に一般化した(9)。

平行して茅葺き屋根にはトタンが被さり、職人は減少し、野山はすべて住宅地にとって代わられ、細々と残る郊外の茅葺き民家の周辺には、ニュータウン

として団地や戸建てがひしめくという奇妙な風景が出来上がっている。

茅葺き民家の修復、文化財の修復や移築なども、この工務店が請け負うと、「場所」を無視した数字と図面だけによる、建築のための建物として、

茅葺きが「ハコ化」するような施工が見られるようになる。

特に神戸市北区の茅葺き屋根移築行為は、国交省が発注し、工務店が元請けになり、茅葺きは二次下請けという典型定期な近代的建築施工であった。

このあたりも別項に譲るが、ここで私が重要だと考えるのは、「工務店」に依らない形、すなわち施主から職人に直に修復を発注した出張仕事には、

かつて出稼ぎに出た茅葺き職人たちと同じように、集落に入り、現場に泊まり込み、生活を共にする、つまり「場所」に入るという出張がいまだに

残っているということである。

 

 その一例として、ザイラー茅葺き音楽の修復があげられる。

ドイツ人ピアニストのエルンスト・ザイラー氏が1980年代に、福井県のお寺の本堂を移築し、それをそのままコンサートホールとして利用している。

春と夏年に二回定期的に夫妻によるコンサートが開かれ、JR西日本の広告にも使用された。

裏山にとけ込むように立つ音楽堂は、周辺の田んぼの広がりと相まって、いかにも外からみた「日本的なもの」をうまく抽出し、それをクラシックピアノと

混ぜ合わせることによって、新たな視野と聴覚が生み出されている。

山城萱葺屋根工事(現:山城萱葺株式会社)はザイラー音楽堂と、母屋の二棟の茅葺き屋根を「住み込み」という形で、2006年7〜9月、2008年3月、

2009年7〜8月、2010年3月の4期にわたって「差し屋根」を行った。

 

(9)『「住宅」という考え方』松村秀一 東京大学出版 第19節参照

職人のヘルメット
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職人が綴ったコラム

かつて山城萱葺で働いていた職人が、茅葺きの難しさとおもしろさ、現場での苦悩や発見をコラムとして綴ってくれました。なかなか言葉で語られることのない茅葺きの世界。ご興味のある方は、のぞいていただければと思います。

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