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エッセイ6「場所ということ」14

 「神戸の屋根には、蓑甲(みのこう)をつけなくてはならない。勝手に地域の屋根をかえてはダメだよ。」(山田親方)

 

 重要なことは、出張にいったら、その「場所」で受け継がれた屋根の形に仕上げなくてはならないというのだ。

特に茅葺きの場合、棟の形、棟の装飾、ケラバの蓑甲の有無、軒の装飾の有無など、地域のよってかなりの形態に差がある。

個人の趣味や、裁量で、地域性つまり「場所」の歴史をかえてはならないのである。

現在こそ、出張という形で茅葺き職人はいろいろな屋根に触れることができるが、それは交通が発達した近年こそ材料の運搬とともに可能となった。

しかし、遠くの「場所」の屋根を、京都風に仕上げてはならない。

簡単に移動が可能になると、その「場所」に来ているという意識が希薄になりがちである。

いつもの仕上げに頼りたくなる。

が、そのようにしてその「場所」の積み重なりを消し去ってはならない。

京都風に葺き直すことはいくらでも可能であるが、それでは、その「場所」における歴史、記憶、景色を消すことになってしまうのだ。

 

 それでは、出張に行った場合、どうやってその「場所」の屋根の形を探るのであろう。

ひとつは、写真で施行前、移築前の姿を見るということで再現する方法である。

写真など資料が残っていない場合、ふたつめに歩いて近隣の茅葺き屋根をみてまわる、という方法である。

山田親方は、神戸市北区の場合、写真などが残っていなかったため、周辺に残る茅葺き屋根の棟の形をスケッチしてまわっていた。

出張でなくとも、たとえば2009年4月から5月に、京都府北部と南部のちょうど中間にあたる左京区大原で棟を含めた茅葺き屋根の修復工事を

行ったときには、北部風にすべきか、南部風にすべきか辺りの茅葺き屋根を見て回った上で決定していた。

できるだけ個人の趣味が介入しないように、できるだけ「場所」に忠実に、意匠には慎重な選択がなされる。

職人のヘルメット
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職人が綴ったコラム

かつて山城萱葺で働いていた職人が、茅葺きの難しさとおもしろさ、現場での苦悩や発見をコラムとして綴ってくれました。なかなか言葉で語られることのない茅葺きの世界。ご興味のある方は、のぞいていただければと思います。

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