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エッセイ3「別嬪さん3」

次ぎはいよいよ茅を下地に乗せる「軒付け」の工程だ。

軒は屋根の茅の勾配をつくるための重要な箇所であり、また屋根全体の重みを受ける場所でもあるので、慎重に材料が選択され、

ときには材料にハサミで手を加え、形を整えてから葺かれていく。

稲藁、ススキの穂先、ススキの元、長いままのススキ、大阪のヨシという手順で葺かれ、それぞれ竹で押さえられ、針金あるいは

縄をハリと呼ばれる道具をもって下地まで貫通させ、下地と竹を絞めて茅を固定する。

 

こうした職人たちの仕事を横目にしながら、わたしは茅を切り、担ぎ上げ、職人たちが要求する茅をもっていくのが、丁稚の最初の仕事の中心であった。

その中で、「別嬪さん」の茅を持ってきてと幾度となく要求されることがあった。

「別嬪さん」とは一体なんだろう。

親方に聞いてみると、

「茅には別嬪さんとそうでないものがいます。」(山田親方)という。

 

茅にはモトとサキがあり、さきからモトにかけて張っていて、全体が円錐のような形をしている茅は種類や長さに関わらず「別嬪」と呼ばれているというのだ。

持っていった茅が「これが別嬪。うんよい形をしているなあ!」と言われることもあれば、別嬪だと思ってもっていった茅が「いやあこれは別嬪ちゃう。

使えへんわあ。」とあっさり否定されてしまうこともあった。

いったいどんな基準で「別嬪」だと決めているのか、丁稚開始のひと月めの私にはさっぱり理解ができるものではなかった。

こうして茅の前で右往左往していると、

「茅には、相対的な中に絶対性があります」(山田親方)と語った。

 

???。

ますますさっぱりわからない。

後年やっと理解することになるのだが、ひとつとして同じもののない茅には、「いいかたち」という絶対的な基準が存在しない。

すべてが比較の上になりたって、「これよりはこちら」というように相対的によい形が決まっていくものなのである。

さらに現場ごとに使われる材料も違う。

同じススキでも、阿蘇のススキ、京都のススキ、御殿場のススキなど産地によって形も違うし、「別嬪さん」の含まれる割合もかわってくるし、

また「別嬪さん」の円錐の形そのものも変わってくる。

つまり「相対的な中の絶対」とは数多くの茅を見て、触って、比べて、現場ごとに使われる茅の中から「別嬪さん」を選び出し決定することに他ならない。

幾多の中の茅から「別嬪さん」を決定する=絶対化するという行為は、それだけ多くの茅を見てきていたことの裏付けであり、職人としての熟練度を表すものでもある。

職人のヘルメット
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職人が綴ったコラム

かつて山城萱葺で働いていた職人が、茅葺きの難しさとおもしろさ、現場での苦悩や発見をコラムとして綴ってくれました。なかなか言葉で語られることのない茅葺きの世界。ご興味のある方は、のぞいていただければと思います。

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