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エッセイ8「タマとオクタマその2」3

 なぜならば、軒をみると茅がしっかりと葺いてあるからだ。

だが水切りから上は、杉皮がおよそ2寸位づつずらしながら葺いてあるのである。

一体どのように葺いてあるのだろう?

私は、頭の中でイメージしてみても、かなりの厚みをもった杉皮葺きの屋根が、内部でどのようになっているのかわからなかった。

そして、今回葺き替えを予定している、「かんづくり荘」の屋根も、奥多摩の形式を踏襲するかの様に、簑甲がついた杉皮葺きの巨大な切り妻屋根なのである。

 

 私は、はたと理解した。

「ここはもう東京ではないのだな。」

東京都檜原村という行政区画は名ばかりで、後述する様に、奥多摩の茅葺き屋根は、山梨の甲府盆地から以東の茅葺き屋根と、巨大な屋根、杉皮葺き、

簑甲のついた豪壮なケラバ、切り妻や甲造りの屋根などの点において、かなりの共通点を有している。

茅葺き屋根の形式で照らし合わせてみると、甲府盆地と、武蔵野丘陵地を隔てている奥多摩の深い山々は、山梨と東京の間の県境の線などまるで

意味をなさないかのように、ひとつの独立した文化的領域をもっていると感じられるのだ。

 

 檜原街道を武蔵五日市から40分ほど走ったところに「かんづくり荘」はあった。

巨大な切り妻の屋根を見上げて、親方と顔を見合わせる。

 

「高いなあ・・・。」

 

「可喜庵」の屋根や軒から棟まで4m〜5mくらいであったのに対し、かんづくり荘の屋根は軒から棟まで8mくらいあり、地面から棟までは12mほどあるではないか。

足場を組むのは我々の仕事である。

よい仕事を生むにはよい足場が必要である。

よい足場とは、体が自由に動かせること、逆に言えば手や足などが茅を葺くのに窮屈にならないこと、体の動きに制約がないことであり、

職人同士の動線がぶつからないこと、材料がある程度積める程の広さをもっていること、などである。

しかし、切り妻のケラバの足場は地面から高さ12mもある。

ケラバから45cmほど低い所に、ケラバと平行してハシゴが載せられる様に、なんとか足場を組んだ。

ハシゴの隙間からは、高さ10m以上の地面が見える。

このときばかりは私も生きた心地がせず、毎日冷や汗の中で作業をしていた。

職人のヘルメット
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職人が綴ったコラム

かつて山城萱葺で働いていた職人が、茅葺きの難しさとおもしろさ、現場での苦悩や発見をコラムとして綴ってくれました。なかなか言葉で語られることのない茅葺きの世界。ご興味のある方は、のぞいていただければと思います。

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