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エッセイ7「タマとオクタマその1」18

可喜庵の棟は、解体前においては、草葺き屋根専用の棟瓦で収めれていた。

しかし、鈴木社長は次のように述懐する。

 

 「おやじの父、つまり私の祖父は、昔は棟に芝を植えていたといっていたのを覚えてるんだよなあ。」

 

 わたしはピンと来た!「鈴木社長、それは芝棟ですよ!」

私は興奮して答えて、芝棟は元来東日本に多くみられた茅葺き屋根の棟収め形式であること、根を張らせて土を固めさせることなど、

本で聞きかじったことを伝えると、鈴木社長は興味を示ししばらく熟考していた。

 

 その後、棟については明確な答えもないまま、可喜庵の葺き替えは台風の直撃うけながらも順調に進み、7割ほど葺き上がった。

そして、或る日のことである。

休憩時間に我々職人が談笑していると鈴木社長が近寄ってきて「あのさあ、やっぱり棟を芝棟に戻そうと思うんだよなあ。」とおもむろに一言かけてきたのである。

棟瓦を解体するとき、瓦を元通りに戻せるように番号をふり、現場の脇に大切に保管しておいたので、てっきり瓦を載せ直すのかと思っていたので、

一様に目をあわせ、私たちはびっくり仰天してしまった。

思いついたら止められない性格の社長である。

棟を積むまであと1週間の猶予しかないのにも関わらず、造園屋を方々探しまわり「芝棟をできないか。」と聞き回った。

もちろん「芝棟」など名前すら何のことかわからない返答がほとんどのなかで、唯一芝屋根を施工したことのある造園屋に出会ったのだ。

90年代の終わりから屋上に芝をはったり緑化することで断熱効果をうみ、また自然を身辺に置くことでリラックス効果があるということで、屋上緑化が流行し始めた。

呼応するように、一般住宅でも、屋根に土をのせ芝をはる芝屋根がみられるようになってきた。

その造園屋さんは、一般住宅の芝屋根を請け負ったことがあるらしいのである。

私たち茅葺き職人は瓦巻きであろうと芝棟であろうと、棟をおさめる手順は変わらないので、棟を積む茅を葺き、杉皮で棟をまいた所で、あとは造園屋さんに作業をゆだねた。

杉皮の上に水を含ませた苔をのせて、あとは30センチ四方にプレカットされた芝をのせていき、そこにユリやアヤメの種を蒔いていた。

そして散水チューブを仕込み乾燥で枯れない様に対策もとっていた。

苔が糊代わりになりやがて杉皮と芝が一体化して根を張るのだという。

職人のヘルメット
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かつて山城萱葺で働いていた職人が、茅葺きの難しさとおもしろさ、現場での苦悩や発見をコラムとして綴ってくれました。なかなか言葉で語られることのない茅葺きの世界。ご興味のある方は、のぞいていただければと思います。

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