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エッセイ3「別嬪さん11」

以上、丁稚を内面の成長過程としてみることは、とうぜん年季明けを経た現在の私が振り返って思うところであり、一年目のわたしには、そんな余裕も考えも及ばない。

空っぽの自分をみつめ、はやく親方や先輩の職人のように絶対的な言語を獲得してみたいと思ったし、それを裏付ける自負を抱きたいと思った。

もっと早くこの仕事に出会っていれば、とも思ったし、いやいやエチオピアに行ったから出会えた仕事なんだと言い聞かせ、いまやれることは毎日、目の前

の茅を葺いていくことしかないと痛切に批判してみる。

そう、現在という一回きりのリアルな出来事を精一杯大切にするしかないのだ。

いまは目の前の茅を葺くしかない。再び、目の前の茅に話を戻そう。

 

わたしは、「ひとつかみ」を体得するのに苦心した。

一段を葺くうえでの手順として、まずベテランの職人が一段のはじめにカドをつける。

カドは屋根自体の角度、茅の勾配、材料の選択を担う重要な箇所である。

つぎに、「ヒラ」と呼ばれる、カドとカドのあいだを、丁稚のものが埋めていく。

私は、はじめてヒラを触ったのは、2006年5月の沢井家であった。

3尺と6尺に切ったヨシを交互に葺くことで埋めていく。

しかし、「ひとつかみ」の量がわからない。

葺いた茅の量はバラバラであり、しかも遅い。

悔しくて、できない自分にいらだちを覚えた。

その後、ヒラが埋まった茅をタタキで整形し、竹で下地と縫い付けて、「ひとはり」とする。

この「ひとはり」を一段と数えるなら、規模の大小があれ、民家で10段から15段ほどから成り、大きいお寺の本堂などになると20段から30段ほどから成っている。

わたしは一年間、材料を刻んでは、それを担ぎ上げ、合間をみてはヒラを並べて、たたきで整形するということを繰り返した。

毎日、その繰り返しに、いったいこのままで職人として成長できているのかと不安がよぎる。

自分より年下の職人がどんどんとうまくなっていくように感じる。

親方も特に注文をつけることもない。

日々の繰り返しに、嫌気を感じることもあった。

そんなとき山田親方から言われた一言である。

職人のヘルメット
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職人が綴ったコラム

かつて山城萱葺で働いていた職人が、茅葺きの難しさとおもしろさ、現場での苦悩や発見をコラムとして綴ってくれました。なかなか言葉で語られることのない茅葺きの世界。ご興味のある方は、のぞいていただければと思います。

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