エッセイ8「タマとオクタマその2」2

 いままで葺いてきた関西の屋根のカドは、基本的に直線で成り立っている。

カドの線、軒の水平線、ケラバの線、棟の水平の線、品軒の段の折本など、線という線は基本的に、直線で成り立っており、屋根の面自体は柔らかく起る(むくる)。

弥生時代から大工が行ってきた様に、私たちも糸を引っ張ることで線を出している。

糸に水平器をあて、棟の水平や、軒口の水平の線を出している。

水平の線さえだせれば、あとはその通りに軒をハサミで刈り込んだり、棟の竹を水平に乗せたりする。

ハサミで刈ること自体もちろん熟練した技術を要するのだが、糸を水平にさえ張れば、軒口の線をだすことはそれほど難しいことではない。

同様に、ケラバの厚みを仕上げるときも、左右だいたい同じになるよるように糸を張り、ハサミで仕上げていく。

このときも、糸さえきちんと張れていれば、ほとんど自動的にケラバの形が決まる。

 

 しかし、いまこの奥多摩の簑甲を見てみると、糸が張れない。

優美な曲線は、糸を用いた直線を拒む。

職人の勘なのだろうか?

みるほどに疑問が湧いてくる。

 

 そして驚いたことに、トタンをかぶっていない少数の茅葺き屋根に近づいてみると、葺いてあるのは茅ではない。

なんと杉皮である。

京都御所の屋根や、清水寺の屋根、桂離宮の屋根など、平安時代に確立された日本独自の「檜皮葺き」(ひわだぶき)の屋根とも違う。