茅葺きの新しいカタチ1

先週末、神戸の茅葺き職人くさかんむりの相良さんが講師の「かやぶき世界探訪~ヨーロッパ編~」を聴講してきました。
非常に気づきが多かったお話でしたので、今回はその内容を踏まえて将来の茅葺きについて少し考えてみたいと思います。

みなさん、茅葺き屋根について、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
世界遺産の白川郷、日本昔ばなしの世界、日本の田舎にある風景・・・
このようなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

実は茅葺きは世界中にあります。
今回の講演テーマでもあるヨーロッパでは、茅葺きの新築が建てられる等、今なお茅葺きが普及しています。

ヨーロッパに茅葺きがあると聞いて、驚いた方も多いでしょう。
茅葺きは日本独自の文化ではなく、世界中に見られます。

相良さんの話によると、オランダでは約350社の茅葺き会社があるそうです。
それだけ多くの企業が事業継続できるほど、茅葺き市場が大きく、ニーズがあるということなのです。

日本では茅葺きと言えば、古民家という印象があると思いますが、オランダでは屋根だけでなく、壁材として利用されたり、現代的な技法で葺かれた新築の住居もあります。
役所や消防署も茅葺き屋根のところがあるそうです。

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日本で茅葺きの新築は、法規制の影響もあり困難なのが現状です。
オランダでは1970年にある茅葺き会社が法改正に向けた取り組みや運動を始めて、1991年に法改正が実現されて、茅葺きの新築が許可されたそうです。

日本とヨーロッパでは、気候・風土や文化、国民性等が違うため、単純な比較はできませんが、茅葺き市場は内部環境と外部環境共に大きく違います。

日本の茅葺きは様々な問題を抱えており、茅葺き棟数は年々減少しています。
新築が建てられない以上、厳しい状況にあると言えるでしょう。
しかし、オランダの成功事例もあるように、日本でも独自の切り口で茅葺きを発展させ、市場を拡大させていく道はあると思います。
今回は、経営的な観点から茅葺き業界・茅葺き市場を見ることにより、茅葺きの新しいカタチを考えていきたいと思います。

茅葺き業界の外部環境を考えてみましょう。
先ほど述べたような、法規制、市場縮小、担い手不足、茅材の供給不足等の脅威があります。

一方、茅葺きは自然素材で、屋根材として役目を終えた後も、肥料やエネルギー等に活用することができるエコな素材です。
地球環境にやさしい、循環型社会を形成する上では、無くてはならないものです。
ロハスや田舎暮らしも徐々に増加しており、世界遺産の白川郷等の観光地には多くの観光客が訪れます。

次は内部環境を考えてみます。
競合を他の屋根材として見ていきましょう。
強みは、断熱性が高い、自然素材、うまく再利用すればゴミが排出されない等が挙げられます。
弱みは、比較的寿命が短い、維持コストが高い、施工に時間がかかる等が挙げられます。

SWOT分析の切り口で、茅葺き業界の現状を整理してみましたが、ここからでも将来の茅葺きのあり方を考えることができそうです。

将来の茅葺きについて考える為にも、経営ビジョンのような茅葺き市場全体での将来ビジョンが必要になってきます。
オランダが法改正までに20年かかって、今の茅葺き市場があるように、日本でも中長期的な視野にたったビジョンが必要です。
共感・共鳴できる茅葺きビジョンがあることで、担い手の増加や茅葺き需要の活性化に繋げていくことができるでしょう。

茅葺き屋根というハードだけを見るのではなく、観光や体験などの切り口も加えて見ることにより、茅葺き市場を広く捉えることができます。
屋根の維持・修復を事業として、物理的に捉えると視野が狭くなります。
機能的に事業を見直してみると事業の幅が広がり、様々な展開が可能になるケースがあります。
例えば、日本のふるさと再生業、循環型社会形成業等が考えられるでしょうか。

将来ビジョン検討するだけでなくを事業ドメインをどう設定するのかも重要です。

なぜ今、茅葺きなのか?
茅葺きが必要なのか?
茅葺きを通じてどのような価値を提供していくのか?
顧客は誰か?

このような疑問に一つ一つ答えていくことが、茅葺きの将来を考えるきっかけになるのではないでしょうか。

話が長くなりましたので、続きは次回のコラムに。